いろいろ話したいことがある.

スコットランドの夕焼けはなかなか終わってくれない.向こうにいたころ,夏の間,一人でずっと海岸線をドライブしていたら夜の11時ごろまで陽が残っていて,それは本当に美しかった.ああいう夕焼けは日本では見れないから,何度もシトロエンを運転して見に行った.

それとはぜんぜん別の時期だが,いつかブラジルでみた夕陽は地平に垂直にストンと落ちた.あっという間に夜が余韻も残さずやってくるのだ.同じ太陽が地上にただ落ちていくだけなのに,ずいぶん印象が異なるなと思った.そいうことを今でも覚えている.

蕎麦屋に一人で入り昼飯を食った.ぶらぶらと構内に戻り,色づいた大銀杏の前で空を見上げた.見上げた太陽は厳密にいえば500秒だけ過去の姿だ.夜がきて,そろそろ満ちた月であってもそれは同様で1秒だけ過去の姿である.ペテルギウスなら相当遠い.過去は遠く.遠いものほど美しい.しかし,それはすべて網膜に届くものをみて自分の脳が判断している.では,もう網膜にすら届かぬほど遠ければ人はどう思うか.L'essentiel est invisible pour les yeux.

12月がやってきた.