一年たったので墓参した.研究が果たしていったいどういうものなのか,いまだにオレにはよくわからない.何を考え,どうして死んだか.俺はオレだしな.

心の奥になにかが,そこに黙ってただ佇んでおり,そのなにか,まぼろしのようなものが,よくわからぬが,自分を支配しているようでもあり,距離をおいて遠くからオレを見ているようでもある.あれは果たして何か.

深いところまで考え抜いていく.考え抜いて,こうだと思い.もう一度それが正しいか試す.そうすると間違っていることがわかり,別の方法を考え始める.3日3晩そういうことをずっと繰り返し,ひたすら繰り返しているうちに,あれは顕れる.

小さい頃,爺様と暮らしていた頃,オレは殆どものを喋らない子供であったから,爺様といえど会話が成り立たず,あの頃,オレの中にどっかりと居座ったあれは,放っておくと,ずくりと勝手にオレの中で大きくなった.

爺様はオレに適当な図面を描かせ,鋸で木を切らせ,兎に角いろんな何かを作らせた.爺様はじっとそれを見ていた.できあがると,と爺様はオレを膝の上にちょこんと乗せて頭をずっと撫でてくれたが,果たしてあれは,それで薄まり,しかしオレの中にあった.

あれをなんとよべばいいか,いまだよくわからぬ.