人間には自分しかない.そのからだと頭と心で生きていくしかない.だから自分自身を変えていくのも自分でしかない.どんな切実な痛みを抱えていようが,癒しもアドバイスもお金も愛もすべては一部で単なるきっかけに過ぎない.自分にどうにかしようという気がない限りどうにもならないことがある.

変えるのは自分だ.変わるのも変わらないのも結局は自分しだいだ.そしてどうするのも自由だ.しかし同時に人間は偉大じゃないから,科学者といえど,総理大臣といえど,億万長者といえど,人間一人にできることは限られている.

それは,だからといって,彼らの力が限定的であることを意味しない.人は些細なことで傷つくし,与えられた傷が決して小さくはないこともあるだろう.人間には不当な苦しみが与えられるものだし,指ひとつで木っ端微塵に心が砕けてしまうことさえある.

理不尽な制度,不毛な気遣い,残酷な暴力,無価値な茶番.いくら仕分けをしても,切り詰めても,生活にゆとりは生まれない.ゆとりが必要なのは心だろう.大切なことが伝わらないまま,こぼれ続けたまま時間がただ過ぎていく.

出口の見えない人間の苦しみや怒りの行方について,人間が無力であるといいたいわけではない.ただ,絶望的な状況の前で,しかしそれでもなお,人間にできることは何か.と,問うことがある.