ナイーブなことを思っているに違いないのかどーかよくわからんが,それは,何かがおこるたび,エライ人に言われてとか,あるいは,皆やっているとか,自分だけは関係ない,そういう空気のような,まるで目の前にいる我の現実を無視しようとするすべて.そいうものを全力で拒絶していたということであって,未必の殺人的行為とまでいわなくとも,そういう,意識しないまま,謂れのない痛みを誰かに与え,知らない顔をしてぬくぬくとしている,あるいはそいう行為に対するおそらくは意図しえない無関心が引き起こすもの,その結果がどうなるかについて,比較的わりと長い時間にわたって望まぬままみてきたような気がしている.でわ果たして,わけのわからぬものとわけがわかるものがあったとして,その両者に横たわる絶望的な断絶は,たぶんわけのわからぬものを隠蔽し,裂け目を隠すべく表層を塗り固め空洞をつくった.その孔について,,

火をみた後に,荷物をまとめて神戸に行き,瓦礫の下で,階下で眠っていた姉弟のそのまま生き埋めになった両親の写真を探した.行為は三日三晩続いた後,見つかったあの写真は,冬の寒さの中で腐ることのなかった死体を野火で焼くことなく送ったが,圧倒的な痛みや苦しみ,その後に訪れる絶望,時間を経てもいつまでも追いかけてくるその暗い生涯薄れることのない感情は,わが身の深い場所にある鈍いどうしようもない痛みのようなものにも似ており,それを振り切るように,深江,青木,住吉,御影,岡本,六甲,寺や学校,瓦礫の下から,壊れかけたマンションの屋上まで,さまざまな場所でただただ手伝いながら,焼き芋1個2000円,確かにそんな話もあったが,仄かに薄暗い煤に塗れ焼き尽くされた現実の中で,何ができたかと自分に問うたところで,実際に何もできず,今何ができるのかと問うたところで,さして変わらぬ.いっそ見える傷なら対処も可能だと思うが,もはや購いようのないそれは,向き合い方がわからない幻視のような真昼の月のようなもんかもしれぬ.