ふと.

金を十分もった老人はいい意味でも悪い意味でも既得権益を持っている.獲得してきた知識や技術,それに資産や人的ネットワークなどで彼らは自然にそれを守ろうとする.だから自分の世界を意図的に,また無謀に拡大して不慣れな環境や他者と遭遇することを避ける.趣味というのは,基本的にそういう老人のものだ.趣味は,考え方や生き方を決して変えたりはしない.なぜなら自分を脅かすものがないからだ.そこには,本当に心を震わせ精神を押し広げるものも,泡立つような失望も歓喜も興奮も,どうにもならない危機感も絶望もない.

そいうものは仕事の中にしかない.そして,そんなものはもう不要であるという考え方は金を持った老人において特に成り立つ.