いろいろ会議に出たり,某所のレポート読んだり,こういうことが起きていると大雑把に理解したこと.どうでもいいけど.

1)これから先,何が起こるか
日本の貯蓄率は1992年に15%程度だったものが,消費,消費とメディアがCMを流しまくった効果でもあるまいが,今は3%にも届かず,既に米国を下回り先進国の中で最低水準に達し,歯止めがかかる気配がない.また企業の側をみても労働分配率は先進国中最高の値を示しており,収益性が著しく低い産業構造となっており,家計を食いつぶし,企業もさっぱりという状況.このことと,地域別の成長率を掛け合わせてみる.関西圏域の経済成長率は96年から06年で-6%,地方圏は-2%,東京+6%,名古屋+5%となり,東京・名古屋圏と関西・地方圏ではっきりとした格差が広がっていることがわかる.さらに今後予想される地方の人口減少は2035年までに1200万人と歯止めがかからない.大阪では300万人が減少する.現時点の見かけ上の失業率は5%程度だが,潜在失業率は13.7%と社会情勢の不安定化が顕在化しつつある.2009年に8164万人の労働者人口が,2050年には4930万人(2020年には7363万人)となり,2020年以降,大きな都市でも経済の担い手を喪った地域コミュニティのある種の機能は急激に壊滅する.

2)内需依存の失敗
円高危機以降外圧もあって内需拡大に突っ走った日本の輸出依存度は僅か17.4%まで下がった.シンガポール231.1%,香港212.5%に対して内需に依存した経済体制へとこの1/4世紀で大転換したといえるだろう(IMF内閣府「経済計算」).そもそも先進国はどこもこの程度の輸出依存率なので,この比率自体はどうということもないが,問題はGDP伸び率であって,GDP伸び率に占める自動車の割合は半分もあるのだが,いまだにGDP伸び率に自動車は寄与しても,内需がさっぱり経済を成長させていないという事実が重要なわけで,いったいどうやって貯蓄率減少,労働人口減少,高齢化社会の三重苦を支え得るのかという問題に私たちは直面せざるを得ない.日米構造協議が生み出した内需拡大の結果としての都市ストックの拡充の負担が重くのしかかる.矢鱈な保全や支援とやらは最後の財源を「今」どこに投資すべきかという選択性を放棄させ,結果何が救えたのかという話になるのかもしれない.

3)産業が駄目になったのはなぜか?
産業の競争力に着目してみると,日系企業は収益率がとにかく低い.このことの原因のひとつとして同一業種内に多数の企業が存在するという日本独自の特徴があげられる.結局1社あたりの市場規模という観点に立つと,韓国と比較すると差が明らかで,自動車で1.5倍,携帯で2.2倍,電力で3.9倍の市場を1韓国企業が持っているのだ(みずほコーポレート銀行産業調査部調べ).日本企業が,国内競争のための商品開発を行うものの,その展開力がさっぱり届かないないことで極端に疲弊していることは明らかだし,そいう不毛な国内競争を煽るべく広告業などがかつて儲けて,その行為にそれなりの意味もあったのだろうが,今はもう時代が違う.内向きの方法論で立ち向かったオリンピックプロモーションを観れば結果は明らかで,そういう煽り,癒し,戦略ではもう限界.日本は85年以降,アメリカからの圧力もあって内需拡大で経済危機を乗り切ろうとしたわけだが,結果として過剰なまでの供給体制にメスが入ることなくこれが温存され,一方韓国では経済危機にあたって,産業界の集約化を行い,リストラを早いタイミングで断行し,財閥企業の過剰な多角化に歯止めがかかり,国際競争のための産業化,戦略化が進んだ.ドメスティック企業同士の茶番的競争コストをしょった日本との違いが際立つ.

4)新しい産業は生まれているか?
新しい産業についてみれば,75年-78年には開業率:5.9%,廃業率:3.5%だったものが,06年-08年には開業率:5.1%,廃業率:6.2%と大きく逆転.ベンチャー企業が生まれにくく,廃業が増えるのが基調となっている.マクロに見てみると1981年:528万社から2006年:421万社と企業数が大きく減少している(2008年中小企業白書).大田区の事業所を例にとると,1983年:9千社から2008年:4千社に減った(工業統計).事業所が地域から撤退し廃業しているという事実の中で,取引先の集約化への対応で生き残る事業所,新技術開発を行う事業所は限られており,どんどん新しい事業が生まれている東アジア諸国に比べ,地域の雇用は不透明なままであるといわざるを得ない.いっそ産業化放棄とかって新しい道のりの途上とみることもできる.が,それまで体力が持つかといえば疑問.

5)世界シェアを喪ったのはなぜか?
確かに垂直型のモデルが崩れてきていることは間違いない.たとえば2001年を基準にとるとカーナビ,DRAM,DVDプレーヤー,リチウムイオン電池の世界市場の伸びはすべて200%以上であるにもかかわらず,リチウムイオン電池をのぞく商品のわが国のシェアは20%以下に低下,リチウムイオン電池もわが国のシェアは95%から50%程度まで低下している.こうして起こった事実は,垂直統合,自前主義,同業切磋琢磨の中で世界シェアを席捲した後,円高対応として内需拡大に走り,バブル崩壊で債務,雇用,設備の3つの過剰だけが残ったという結果であり.高度すり合わせによる国内回帰と共に世界シェアの大喪失が起こったのだ.同時期,外資規制に守られていたアジア企業は,安い人件費と大胆な投資減税の中で順調な成長を遂げ,特定品への投資の集中を図ることで,モジュール化モデルで世界連携を果たす.また欧米は70年代に日本の進出によってシェアをいったん失くしたものの,米国はオープン分業で知的産業の育成に成功,欧州はEU主導で投資するなどアジアとの連携を模索している.

6)どうすれば生き残れるのか?
もう少しミクロに見ればわが国でも生き残っている分野もある.たとえばデジカメは日本がシェアをキープしている数少ない分野だが,AFレンズやシャッター絞り,フーリエ変換(笑)などはカプセル化され垂直型のビジネスモデルでブラックボックス化されている.これにオープン規格化したメモリーカード,USB,画像加工技術が組み合わさることでうまく市場シェアをキープしながら,規模そのものも拡大してきているといえよう.こうした戦略は,インテルのMPUの独自規格に,オープン規格であるPCI/バスを組み合わせたマザーボード戦略も同様であり,オープン化された周辺領域でコスト競争が激化し,シェアを拡大させた.またシスコのルーターはライセンスされた企業が世界販売し,シスコがデファクト化したし,携帯電話のノキアモトローラは,インフラ側のブラックボックス化との連動が可能な相互依存型のオープン標準化を行い,単独技術としては優れていたが日本企業が敗れるという結末に至った.しかし,今過去の経験を見ていると見通しのいい産業政策なんてあるのかねという気もする.

7)東京に立地したいか?
では,立地という視点で考えてみる.アジア地域で最も魅力を感じる国・地域を日本進出済み企業に対して尋ねると,2007年度にはアジア地域拠点,R&D拠点ではそれぞれ23%,30%の人が日本と答えていたが,2009年にはアジア地域拠点,R&D拠点で日本に進出したいと答えた人はそれぞれ8%,15%に急落し,中国が35%,24%とジャンプアップして1位となった.さらに中国は生産拠点でも53%,金融拠点でも24%とアジア一位となり,日本は生産拠点1%hが当たり前としても,金融拠点でも8%でシンガポール,インド,香港に大きく遅れをとっている(欧米アジアの外国企業の対日投資関心度調査,経済産業省調査).こうした理由については,法人課税負担率が日本は39.2%で国際的にみて最も高い水準となっていることが原因のひとつと考えられる.一方の米国は31.5%,韓国は23.8%,台湾は13.1%,シンガポールは13%である.主要企業で比較すると,ペトロチャイナが23.6%,サムスンが15.7%,GEが12.5%,インテルが27.6%に対してシャープが35.6%,トヨタが33.1%.この10年間でグローバル企業獲得競争のため,OECD加盟先進国は34%から26%,アジアは28%から25%に引き下げ.それに比べて日本は高止まりの40%前後.これじゃあ東京から企業も逃げ出すぜよ.ドイツでは国内立地しようとする殆どの製造業とサービス業企業が建物および装置機器に要する費用を上限50万ユーロ,50%補助しているのと比べると対照的だっぺ.

8)とにかく日本売りが進んでいる.
港湾インフラの取扱量は94年に横浜10位,東京15位から,2008年には東京24位,横浜29位に.一位はシンガポール,二位は上海,三位香港,四位が深セン.港湾リードタイムもシンガポール24時間以内に対して,日本の平均値は2.1日.料金は東京を100とすると高雄・釜山は60.航空貨物の取り扱い量は,2000年に成田4位から2008年に8位に,上海は圏外から2008年には3位に,仁川(旧:金浦)は4位に.一位はメンフィス,二位は香港.理工系の博士号取得人材の数は米国の1/4で,中国の半分.人口が少ないドイツ,英国よりも少ない7.7千人.さらに日本における高度外国人材の行動教育修了者に占める割合は,先進国の中でも圧倒的に低く,僅か0.7%.米国13.4%,豪州28.9%,カナダ25.8%と大きく異なる.各国証券取引所における外国会社上場数の推移は,シンガポールは1996年30社から2008年300社へ,ロンドンは500社から700社,日本は東京+大阪で70社程度から20社以下になった.市場統合に向けた動きも加速.東アジアの中の日本は買いだったはずだが,いつの間にか日本全面売り.文化とかソフトとかそいうのは知らん.ただ普通の人の生活はお金で成り立っているという当たり前の事実の前で何をすべきかということを考えることは重要.政策にできることも無論あるんだろうが,高所からの分析や議論はもういいよ.個々人が今退路をたってやるべきことは別にある.

9)まとめ
特になし.ため息が出ないとどうかしている.のかね.